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7月FUF学習会 報告 [組合活動]

下記テキストにそって学習会を開催しました。難しい経済学的用語が飛び交うように見えるけれど、学習内容はそれを身近な私たちの生活、マネーに即したわかりやすい話でした。
そして、改めて多くの気づきを得ることができました。
何も知らずに、政府はひどいとか、政治が悪いとか言ってても仕方ないですからね。
私たち自身の労働、生活、消費的スタイルなどなどのひとつひとつを意識を変えていくための学習です。

※レジメの内容については、後半はテキストの要約であり組合や私たちの主張を述べているわけではないです。あくまでテキストに即した学習のためのレジメです。念のため。
答えは自分で探さないとね。



学習会「略奪的金融の暴走」鳥畑与一 学習の友社 

はじめに
 寝そべり主義、ジェネレーションレフト、ブルシットジョブと学習会で扱ってきたが、今回はそれらの議論の前提となっている、資本主義経済の現状、つまり資本主義の金融化についてとりあげる。
寝そべり主義が出てきた背景は、中国の経済成長を支える労働環境996、007(9時から9時まで週6日、0時から0時まで週7日という働き方)と格差の拡大やローン等の負債の増大が挙げられる。先進国の資本主義が金融商品の取引で利益を上げている一方で、実際のものを作るというのは中国をはじめとする発展途上国が担っているという構造になっている。西側諸国とは状況が違うかもしれないが、不労所得を得るという金融商品の売込みに対して批判しており、金融化の批判という文脈は共有していると思われる。
ジェネレーションレフトにおいては、統治モデルとしての新自由主義がどのように展開してきたかという観点から、若者が左派を支持する現象を説明している。そこではリーマンショックが一つの時代を画する出来事として取り上げられているわけであるが、これは世界的な金融システムの崩壊であり、それまでの金融重視の資本主義(資本主義の金融化)の破綻がその背景にある。
ブルシットジョブが出てきた背景もやはり、リーマンショック~ウォール街占拠運動の文脈の中においてである。だから、当然のこととして、その背景には、先のような資本主義の金融化ということが挙げられる。金融化された資本主義は、企業はモノの生産ではなく、手数料や使用料、地代などを平民から徴収し、それを再分配に関与していく。先進国においては、モノを作って売って収益を上げるのではなく、金融商品に投資してその収益を上げるという構造に資本主義が変化している。ブルシットジョブ現象とは、そのような資本主義の構造を背景にして出てきた、賃金労働の在り方である。

 はじめに 「金融立国の幻想」
世界の資本市場の規模は約230兆ドルの資本資産(銀行資産、債券、株の時価総額)で世界のGDPの55兆ドルの約4.2倍超にまで巨大化している。貧困半減などの国連ミレニアム目標実現に必要な資金額は年間1000億ドルで、貧困半減の資金は十分に存在している。 
だが、年金基金や投資信託といった機関投資家によって運用されたマネーの一部が、ヘッジファンドなどの投機的ファンドに流れ込み、巨大な投機マネーがITバブル、サブプラムローン問題、石油・穀物価格の高騰をもたらし、世界の貧困化を加速している。
 投機マネーの支配は全てを株価で評価する価値観を拡大してきているのだが、株式時価総額の増大は企業や国民の利益の略奪を通じて生み出され、金融資産という富の増大自身が貧富の格差を極限にまで押し進めながら進んでおり、このような投機による金融膨張は実体経済の基盤を破壊し、バブルの膨張と崩壊を通じて巨大な社会的損失をもたらすことになる。金融資産は高額所得者層に集中しているために、金融資産の時価総額の増大や運用益は金融資産の保有層=富裕層が独占することになる。その他の資産を持たない層はそれらの恩恵は受けないが、リスクの受け皿として損失だけは被る。
 このような投機マネーが暴走する状態になったのは、投機的利益の極大化を目指す投機家本位の金融改革(金融面での規制緩和・自由化)とそれを支える新自由主義的金融理論である。多国籍独占的金融機関がモノづくりによるインカムゲインではなく投機的利潤への依存を深める中で、投機家本位の国際金融システムを作り出していった。
 日本政府は「金融立国」という方針を出しているが、その意図するところは、投機家の利益極大化を目指したマネーゲームを支える経済システム作りであり、投機家本位の金融改革である。それは投機家の利益をもたらすが、世界と日本の経済と暮らしに大きな犠牲を強いるものになる。

1章投機マネーの暴走と略奪性
(1)マネーの膨張と投機性の高まり
 投機マネーの暴走の背景には、実体経済を上回るマネーの膨張がある。マネーの膨張は実体経済が生み出す利益の分割部分を収益源とするマネーの収益率の傾向的低下、投機マネーの競争激化を引き起こし、個々のマネーの運動の投機性・略奪性を高めることになる。例えば、ハイリスク・ハイリターンという投機的な資金運用の拡大と、企業利益からのより大きな分け前の要求といったように。マネーの膨張は、投資から投機への変質、「経済の金融化・投機化」を通じて実体経済並びに家計への略奪性を法則的に強めてきた。

(2)投機性と略奪性について
 投機マネーの運動は、投機性とともに略奪性を本質としている。投機性とは一定の現金収入をもとにして形成される擬制資本価格の変動から値上がり益(キャピタルゲイン)を獲得することを目的とする点から発生する。キャピタルゲインの獲得のための投機は資本市場内で行われるが、市場参加者の掛け金のやり取りだけではマネーゲームは行き詰るため、市場外からの掛け金(リスクマネー)を必要とする。
 資本市場では、リスクを引き受けることで収益を得る。収益を上げるためには別のリスクの引き受け手という買い手が現れなければならないし、リスクマネーが継続的に市場に供給され続けねばならないわけだが、それらは資本市場での資金運用が必ず儲かるという幻想によって支えられている。その幻想を維持するために、投機的マネーは実体経済から短期的な利益の分け前の拡大=略奪を強めざるを得なくなり、90年代以降の金融市場改革によって、投機マネーの運動は資本市場内のみならず実体経済まで、その対象を拡大させていった。

(3)略奪性とは何か
 マネー膨張の結果、投機的マネーの運動が資本市場の外部に大きく拡大していくと、それは投機性とともに略奪的性格を帯びることになる。
投機マネーは短期間の利益の拡大とキャピタルゲインの獲得のために、企業に株価重視の経営を強いることになり、労働者の搾取を強める。また、株主への配当比率の拡大、低配当性向の企業の買収という形で、企業からの略奪も行われることになる。そのため、企業は短期的利益を拡大させる経営方針をとるようになり、また配当金の増額、自社株買いによる株価操作を余儀なくされ、投資資金の減少に追い込まれることになる。
 投機的マネーの運動の実体経済における支配は、経済的弱者からの略奪を強めることになる。ハイリスク・ハイリターンという投機マネーの論理を実物経済に対する金融活動にそのまま適用してしまうと、低所得者や中小零細企業といった経済的弱者、あるいは不況によって支払い能力の落ちた企業への貸し出しはリスクが高いため、高金利をとることが正当化される。このような支払い能力を考慮しない貸出しは「育てる金融から奪う金融」という金融の性格の変質を意味し、リスクを経済的弱者に押し付け、略奪することを通じて経済的弱者の破綻・淘汰を促進することになる。
 以上のように、投機マネーは投資を通じて利子や配当金を得るという寄生的な性格だけではなく、様々な形で実体経済から利益の分割を能動的に行っている。この投機性と略奪性は真の利益の源泉である実体経済を衰退させるというパラドックスを生み出している。

(4)略奪的金融の暴走のメカニズム
 投機的金融機関はリスクを引き受けて収益を得るわけであるが、そのリスクを他者に転嫁させる金融技術があれば、それだけ多くの収益を得ることができる。リスクテイクは「貯蓄から投資へ」という形で、政策的に拡大されてきた。だが、他者へのリスク転嫁を前提にしたリスクテイクの拡大は、金融システム全体が抱えるリスクの量をも拡大させると同時に、そのリスクの所在が個別金融機関には管理不能な状態をもたらすことになった。また、投機マネーの運動は支払い能力の乏しい層へ、支払い能力を無視した高金利の貸し出しを拡大させることになる。
 
2章略奪的金融の暴走-サブプライム危機が示すもの
 米国住宅向けサブプライムローン市場が国際金融危機に拡大したことが、サブプライムローン問題である。証券化ビジネスの肥大化が指摘されているが、サブプライム層に対する(通常の銀行貸し出しの対象になりえない信用力の低い借り手層)返済能力を無視した貸し出し(略奪的貸し出し)が問題の本質である。
 クレジット・スコアリングに基づいたリスクに基づく金利設定が、高金利なローンを正当化し、返済能力を無視した略奪的貸出を可能にした。住宅ローンなどの貸出債権を証券化して投資家に販売することで信用リスクの転嫁と同時に手数料収入を得るということで自己資本収益率を高めるビジネスモデルが返済能力を無視した略奪的プライムローンの拡大を支えていた。
 サブプライムローンの拡大は、それまで金融アクセスが困難であった層(サブプライ
ム層)が金融アクセスを可能にしたと肯定的評価を与えられた。だが、実体は返済能力を無視した貸し出しであり、返済破綻と住宅差し押さえが急増し、既存の住宅も大量に奪う役割を果たすことになった。

第3章 日本の消費者金融と略奪的金融
 日本においても消費者金融が高金利、多重債務という問題を起こしている。高金利を正当化する根拠として、高金利は市場参加者の合理的な行動の結果なので、上限金利規制は市場原理に反しており借り手の利益を損なうというものである。
 しかし、消費者金融市場は完全市場ではなく、消費者金融市場に財市場のような価格メカニズムは働かない。信用リスクに見合った高金利というのは、支払い能力を無視した略奪的金融という性格を帯びる。高金利の貸し出しが消費拡大の効果があるというが、短期的には借入拡大を起こすかもしれないが、家計が借金漬けから抜けられず、購買力の縮小をもたらす。高金利維持の要求はアメリカの金融機関の要求もあり、投機マネー利益最優先の論理に支配されている。

第4章 金融版市場原理主義による中小企業金融の衰退
 中小企業金融と政策金融は、投機本位の至上主義による信用リスクに基づく金利設定の原則を中心的な論理として再編されてきた。しかし、信用リスクに基づく金利設定は信用リスクの正確な評価は困難、信用リスクの計量化手法は過去のデータに基づく短期的なリスク管理評価であるため、景気循環を通じた長期的な信用リスク評価ができないということから、信用リスクに基づく金利設定は中小企業金融には適用できない。また、中小企業金融は市場原理では処理できない政策金融の固有の問題があり、市場原理的な改革は政策金融を否定するものである。

第5章 新自由主義的金融理論とは何か
 アメリカ自身が米国家計の債務拡大に依存した消費拡大メカニズムと対外債務の依存による消費拡大のメカニズムであり、収入以上の消費に支えられた米国経済の繁栄は巨額の対米資本投資によって支えられている。そのため、アメリカは国際戦略として金融競争力の強化を目指すとともに、日本に対して金融システム改革を行うように要求している。その際に理論的な根拠となるものが、新自由主義経済学である。

第6章 「金融立国」路線がもたらすものは何か
 金融立国論はキャピタルゲインの拡大に国富の拠り所を求めており、モノづくりをサポートする金融機能を衰退させ、実体経済そのものの弱体化を進める危険性がある。「貯蓄から投資へ」の移行は国民の財産で投機マネーの暴走に拍車をかけることになる。

終章 金融の可能性を実現するために
 「奪う金融」から「育てる金融」への転換が求められている。そのためには、短期的利益追求の野放しを許さない社会的利益の実現と調和したルールに基づく監督規制が必要。支払い能力に基づいた金利、支払い能力そのものを高める金融への転換が必要。このような育てる金融の構築は、市場原理では実現不可能であり、「市場の失敗」を補う政府の能動的な役割が求められている。



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7月学習会のお知らせ [組合活動]

次回学習会のテキストはこれです。


「略奪的金融の暴走 金融版新自由主義がもたらしたもの」

作成者: 鳥畑与一 · 2009年

 「ジェネレーション・レフト」だとか「ブルシット・ジョブ」といったものから、現在の社会労働状況を概略的に見てきましたが、なぜ今こんなことになってるの???
 という、本質的な資本主義の構造、新自由主義構造を押さえておきたいということですね。
 あっという間に世界は、ここまでおかしくなってしまったのかなと、すでに予兆はあったはずですが。
 あらためて、経済、金融というからみていきたいと思います。この本の出版から、すでに10数年が経っていますが・・・。

 福岡県弁護士会で先取り的に学習会を開催していたようですね、素晴らしいです。


以下、一部抜粋させていただきます。

 世界の金融資産規模は、この12年間に4倍以上に増大し、2007年末には230兆ドルとなり、それは実体経済の4.2倍となった。マネーの膨張は、マネーの運動を投資中心から投機中心へと、まさに「量から質へ」の変化を生みだし、略奪的金融の暴走をもたらした。
 2006年末の機関投資家の運用資産62兆ドルのうち、半分の32兆ドルがアメリカに集中している。運用資産100万ドル以上の富裕層950万人が37兆ドルの金融資産を保有しているが、その3分の2はアメリカとヨーロッパに集中している。
 日本は、長年の貿易収支黒字にもとづく対外資本輸出の累積の結果、世界一の純資産大国となった。世界一の借金国アメリカは、302兆円もの債務超過であるが、日本は第2位の純資産大国ドイツの106兆円の2倍以上である250兆円の対外純資産を抱えている。なんとなんと、日本は超大金持ちの国なんですね。ところが、国民に対しては、お金がないから年金や福祉予算を削るしかないと高言して、国民をだまし続けています。
 日本は、2007年の貿易収支12兆円に対して、所得収支は16兆円となっている。つまり、日本は「貿易大国」から「投資大国」に変わりつつある。
 アメリカでは、サブプライムローンによって、1998年から2006年の間に236万軒の住宅が差し押さえられた。今後5年間で、さらに600万軒の住宅差し押さえが発生するものとみられている。
 つい最近までのアメリカでは、ハイリスク層への高金利による貸し出し拡大は、「信用の民主化」として賛美され、上限金利撤廃やARMなどの貸出手法拡大などの金融自由化は、低所得者層やマイノリティのアメリカン・ドリーム(マイホームの実現)を促進するものと考えられていた。
 しかし、今日では、サブプライムローンの拡大は、持続性のある住宅保有基盤を破壊することで、低所得者マイノリティの住宅保有増大に貢献するどころか、既存の住宅を大量に奪う役割を果たしている。
 アメリカでは、カードローンの借入れ残高が1990年の2386億ドルから、2007年には9375億ドルにまで拡大した。自己破産した個人も、1990年の78万件から、2005年には208万件と増大した。
 アメリカでも、規制緩和・自由化が進んでいるが、それによってカードローンでは上位10社で91%、JP・モルガンチェース銀行、シティ銀行、バンクオブアメリカの3行で62%を占めている。






 
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