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2023-12-19

「資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか」 ~第三回~

<今回の内容>
1,前回の復習
2,本源的蓄積について~本書の理論的前提
3,本書の特徴について
4,2章の内容について
 
・今回は、本書の理論的前提になっている資本論1巻24章「いわゆる本源的蓄積」について扱っています。それは、本源的蓄積過程、言い換えると農民から労働者への転化過程というのは本書の理論的前提であるため、この部分について知っておくことで、本書を理解しやすくなるためです。

<本書タイトルについて>
日本語版のタイトルと原題はニュアンスが違う
原題:Cannibal Capitalism
How Our System Is Devouring
Democracy, Care, and the Planet
‐and What We Can Do about It

直訳:共喰い資本主義
    いかにして我々のシステムが民主主義、他者との結びつき、この星を食い荒らしているのか‐そして、私たちはそれに対して何をなしうるか
                  
<前回の復習>
・資本主義は経済とその前提条件との関係として捉える。
    →資本主義経済は様々な前提(収奪、社会的再生産、自然、政体)が存在する
    →経済は非経済的な領域の価値と投入物の上に成り立つ
    →資本蓄積は様々な前提が無ければ成り立たないが、資本は増殖する過程でその
前提条件を破壊する:共喰い資本主義

〔資本主義の自壊、資本主義は最終的には自滅するという考え方
     →恐慌の到来、利潤率低下による蓄積の停止(搾取の領域)
→資本論をどう理解するかにかかわる問題〕  

・資本主義は資本の増殖運動のみならず、その前提をも含めたものとして理解する必要がある 
→(分離が)制度化された社会秩序
・資本主義の矛盾:経済的矛盾(労働と資本との矛盾:階級闘争)と4つの領域の矛盾(生態学的、社会的、政治的、人種的・帝国主義的:境界闘争)

<本源的蓄積について>
・資本論1巻 第七篇 資本の蓄積過程 24章「いわゆる本源的蓄積」
 →資本主義の発生の歴史的過程について論じられている
 →本書の理論的根拠となっている

・本源的蓄積:生産手段と生活手段の資本への転化、直接生産者の賃金労働者への転化
  「資本主義的生産はまた商品生産者たちの手のなかにかなり大量の資本と労働力があ
ることを前提とする…資本主義的生産様式の結果ではなく、その出発点である蓄積を
想定する」
   →「いわゆる本源的蓄積は、生産者と生産手段との歴史的分離過程にほかならない
…それが本源的として現れるのは、それが資本の前史をなしており、また資本
に対応する生産様式の前史をなしているからである」
   →「農民からの土地収奪は、本源的蓄積過程の基礎をなしている」
 
・プロレタリアートの創出
   →「生産者たちを賃金労働者に転化させる歴史的運動は、一面では農奴的隷属や同職組合強制からの生産者の解放として現れる…この新たに解放された人々は、彼らからすべての生産手段が奪い取られ、古い封建的な諸制度によって与えられていた彼らの生存の保証がことごとく奪い取られてしまってから、初めて自分自身の売り手になる。そして、このような彼らの収奪の歴史は、血に染まり火と燃える文字で人類の年代記に書き込まれているのである」
 
   →追い出された農民は盗賊、乞食、浮浪民となるが、これらは犯罪とされて取り締
まられた(「流血立法」)。浮浪人に対しては、むち打ち、焼き印、奴隷化、死刑 
という罰則が与えられたり、「懲役職場」に収容された。
「暴力的に土地を収奪され追い払われ浮浪人にされた農村民は、奇怪な恐ろしい
法律によって、賃労働の制度に必要な訓練を受けるためにムチ打たれ、焼き印を
押され、拷問されたのである」

   →労働法は存在したが、最高賃金額と最小労働時間を規定したものであった。また、
労働者の団結は14世紀から1825年の団結禁止法の廃止まで、法律で禁止されて
いた。

<搾取と収奪の関係について>
・下記の図を参照(省略)
・資本家と労働者の関係は階級関係=搾取によって規定されており、搾取を象徴するものが労働力商品であり、資本主義経済である
・収奪は労働者が創出される過程、すなわち、農民が労働者へと転化する過程である。
収奪による農民から労働者への転化は、直接変化するのではなく、従属し収奪される対象を経由することになる。

搾取                     収奪



<本書の理論的特徴>
・資本の本源的蓄積の理解と理論的根拠を本源的蓄積に求めている点
  →本源的蓄積過程に依拠して、現代資本主義分析を行っている
  →資本の本源的蓄積過程から資本主義の一般的「構造」を導き出している
  →収奪を過去の問題ではなく、現在の資本主義の問題として把握している
  →「秘められた場所」への認識論的転換:交換から生産、搾取から収奪へ

<2章の内容について>
 ・2章の主題:資本主義と人種差別について
   →資本主義に人種差別は必然か
   →人種差別なき資本主義はありうるか
     →「資本主義の発達は人種差別を基盤とした蓄積の、質的に異なる体制の連続」

(なぜ、資本主義に人種差別が必然であるのか?)
・資本主義は搾取と収奪から成り立つものであり、収奪は具体的には人種差別という形をとって現れる以上、資本主義はその成り立ちのうちに人種差別を含むものである。
 →資本主義に人種差別が存在することは必然である。労働者は搾取され、労働者
でないものは(黒人奴隷、朝鮮人炭鉱労働者)は収奪される。

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