FUF学習会 [組合活動]
「資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか」 ~第四回~
<今回の内容>
1,前回の復習
2,2章の主題
3,各論
4,おわりに
1,前回の復習
<本書の基本命題>
・資本主義は経済とその前提条件との関係として捉える。
→(分離が)制度化された社会秩序
・資本主義の矛盾:経済的矛盾(労働と資本との矛盾:階級闘争)と4つの領域の矛盾(生態学的、社会的、政治的、人種的・帝国主義的:境界闘争)
<本源的蓄積あるいは収奪について>
・資本論1巻 第七篇 資本の蓄積過程 24章「いわゆる本源的蓄積」
→資本主義の発生の歴史的過程について論じられている
→プロレタリアートの創出、資本家の誕生(近代化)
→「農民からの土地収奪は、本源的蓄積過程の基礎をなしている」
2,2章の主題について(p53-63)
・2章の主題:資本主義と人種差別について
→資本主義に人種差別は必然か
→人種差別なき資本主義はありうるか
→「資本主義の発達は人種差別を基盤とした蓄積の、質的に異なる体制の連続」
・なぜ、資本主義に人種差別が必然であるのか
→資本主義は搾取と収奪から成り立っており、搾取の対象と収奪の対象を分けるも
のは人種であるため
(例:搾取の対象である日本人労働者、収奪の対象である強制連行された朝鮮人)
→資本主義は構造的に人種差別が含まれている
・ただし、搾取と収奪の結びつきは、資本主義の発展段階に応じて変わってくる。
→人種差別は必然であるが、差別の形は歴史的に様々な形をとる
以下、2章では次のことが論じられる
① 搾取と収奪という人種的抑圧の構造基盤
② 搾取と収奪の構図の歴史的変化
③ 新たな形の資本主義社会における、人種的抑圧の克服の可能性
3、各論について(p63-78)
①人種的抑圧の構造基盤
・資本主義をどう見るか
→市場の交換から搾取へマルクス):搾取が無ければ資本蓄積は不可能
→搾取から収奪へ(フレイザー):収奪が無ければ資本蓄積は不可能
→従属労働と政治的従属が無ければ資本蓄積は不可能
・収奪:人間の能力と自然資源を没収し、資本増殖の回路に徴用し、蓄積する
(⇔搾取:資本が賃金を支払い「労働力」を購入し、剰余価値を蓄積)
「収奪が利益を上げるためには、次のような二つの方法によって生産コストを下げる必要がある。一つはエネルギーや原材料など安価な投入物を調達すること、もう一つは食料や衣服など低価格の生活必需品を供給して、より低い賃金で生活できるようにすることだ。自由でないもしくは従属する対象から資源と能力を没収すれば、資本家は(二重の意味で)自由な労働者から、より効果的に搾取できる」
・搾取される自由な対象と従属し収奪される対象との境界線
→「カラーライン」(W・E・B・デュポイス)とまず間違いなく合致する
→「人種差別される「他者」を収奪することは、”労働者“を搾取するために必要な背景条件なのだ」
・収奪は政治的観点が不可欠である:収奪の対象を決定するのは政治的秩序であるため
→国家そして国家を承認する国際システムが搾取可能な対象と収奪可能な対象を選別
→どちらの身分も政治的に作られたものであり、人種はその選別のための基準
「自由で搾取される対象と、従属し収奪される対象とを分ける要素は「人種」という目印である」
②人種差別に基づく蓄積体制の歴史的変化(p79-91)
・資本主義の歴史=人種差別に基づく蓄積の体制の流れ
→搾取と収奪との関係の歴史的変化
・重商資本主義(商業資本主義):16世紀~18世紀 搾取と収奪が分離し始める時代
→人種主体化のさきがけを生み出し、後に大きな影響を及ぼした。
例えば、ヨーロッパ人/先住民、自由な個人/奴隷、白人/黒人
→資産を持たないものはほぼ全員が統治の対象で、社会的身分は従属的関係であったため、人種区分はさほど明確ではなかった。
・リベラルな植民地資本主義:19世紀 搾取と収奪が明確に切り離される時代
→工場を舞台とした大規模製造業の隆盛
→マルクスの思い描いていたプロレタリア階級を作り出し、階級闘争を刺激した
→搾取される労働者に資本主義システムに適合した市民権をもたらす
→自由で白人の市民=労働者⇔従属するほかない収奪可能な被支配民という二つの人種の誕生、人種差別の固定化
→「搾取と収奪は分離されているように見えて、全体的には重なり合っていた。安価な食糧、衣服、鉱石、エネルギーを供給できたのは周辺住民を収奪したからであり、その収奪なしには、本国の工場労働者を搾取したところであれほど高い利益は上げられなかっただろう」
・国家管理型資本主義:戦間期から第二次世界大戦以降 搾取と収奪の分離を弱めた
→「収奪は最早搾取を排除せず、資本主義の中核の一部の労働市場で、搾取と直接結びついた」
→二重の賃金体系を持つ賃金労働。例:黒人は白人よりも給料が低い。
→福祉国家の誕生による身分の差の強化
→市民=労働者には社会保障制度の整備によって「搾取される」だけの労働者を政治的に組み込んだ。
→「ところが、そのことはそこから漏れたものとの差をより際立たせ、彼らを憤慨させ、人種差別される「他者」にさらなる烙印を押す結果となった」
→脱植民地闘争による植民地の独立
→被植民者の身分の上昇は一部にとどまり圧倒的多数は従属する立場のまま
→旧植民地国家の成長戦略は自国の住民の収奪を伴った
・金融資本主義:現在の主本主義体制 搾取と収奪が新しく独特の形で結びついた段階
→経済のグローバル化・サービス化、「底辺への競争」、税収の低下・緊縮財政に伴い、以前は市民=労働者として自由な個人という身分によって保護されてきた者も収奪の対象になる
→「債務」が収奪の原動力
→個人のレベル(例えば周縁国における土地の強奪、サブプライムローンといった略奪的貸付)に限らず国家のレベル(構造調整融資)でも債務による収奪が行われている
→無防備で収奪可能な多くの被支配民、保護され・搾取されるだけの市民=労働者に加えて収奪され、搾取される市民=労働者が登場した
③人種差別克服の可能性(p91-98)
・搾取と収奪の結びつきが弱まっているにもかかわらず、人種差別が続いているのはなぜなのか?
「金融資本主義は、それ以前の体制で人種的抑圧を支えた政治的、経済的構造を解体しつつある一方、今なお人種間の格差を抱え、敵愾心を助長する」
→「現在の社会システムはほとんど全員を収奪する。そして、その社会システムの廃止を目指す、人種の垣根を越えた運動が欠如しているとき、彼らの不満は、勢いを増す右派の権威主義的ポピュリズムとなって現れる」
・人種差別なき資本主義とは
→「有色人種が人口比に応じてグローバル金融と政治権力の高みに立つとともに、搾取かつ収奪の犠牲者が同じく人口比に応じて、政治の舞台で代表を務める体制
→これが実現したとしても、圧倒的多数の有色人種の生活条件がさらに悪化するならば、この種の「人種差別なき資本主義」はせいぜい共喰いの機会均等をもたらすくらいのものだろう
・人種差別の克服に必要なもの
→搾取と収奪を生み出す資本主義の転換を目指す人種を超えた同盟
→自発的に生まれることは無いが、息の長い政治的努力によって可能かもしれない
→搾取と収奪の境界があいまいな今、金融資本主義はおそらくその二つがともに廃止される素地を作り出している
「歴史が差し出す可能性を、真に歴史的な解放の力に変えられるかどうかは、私たちにかかっている」
4,おわりに~「搾取と収奪」という観点から労働運動について考える
・FUFあるいはフリーター労働運動の性格付けについて
→「搾取」される者の組合ではなく「収奪」される者の組合
・FUFが朝鮮学校を支援する会に賛同することの理論的根拠
→資本主義の人種的・帝国主義的矛盾である朝鮮学校差別
→境界闘争である朝鮮学校無償化行動にFUFが参加するのは、組合の性格上必然
→人種の垣根を越えた
<今回の内容>
1,前回の復習
2,2章の主題
3,各論
4,おわりに
1,前回の復習
<本書の基本命題>
・資本主義は経済とその前提条件との関係として捉える。
→(分離が)制度化された社会秩序
・資本主義の矛盾:経済的矛盾(労働と資本との矛盾:階級闘争)と4つの領域の矛盾(生態学的、社会的、政治的、人種的・帝国主義的:境界闘争)
<本源的蓄積あるいは収奪について>
・資本論1巻 第七篇 資本の蓄積過程 24章「いわゆる本源的蓄積」
→資本主義の発生の歴史的過程について論じられている
→プロレタリアートの創出、資本家の誕生(近代化)
→「農民からの土地収奪は、本源的蓄積過程の基礎をなしている」
2,2章の主題について(p53-63)
・2章の主題:資本主義と人種差別について
→資本主義に人種差別は必然か
→人種差別なき資本主義はありうるか
→「資本主義の発達は人種差別を基盤とした蓄積の、質的に異なる体制の連続」
・なぜ、資本主義に人種差別が必然であるのか
→資本主義は搾取と収奪から成り立っており、搾取の対象と収奪の対象を分けるも
のは人種であるため
(例:搾取の対象である日本人労働者、収奪の対象である強制連行された朝鮮人)
→資本主義は構造的に人種差別が含まれている
・ただし、搾取と収奪の結びつきは、資本主義の発展段階に応じて変わってくる。
→人種差別は必然であるが、差別の形は歴史的に様々な形をとる
以下、2章では次のことが論じられる
① 搾取と収奪という人種的抑圧の構造基盤
② 搾取と収奪の構図の歴史的変化
③ 新たな形の資本主義社会における、人種的抑圧の克服の可能性
3、各論について(p63-78)
①人種的抑圧の構造基盤
・資本主義をどう見るか
→市場の交換から搾取へマルクス):搾取が無ければ資本蓄積は不可能
→搾取から収奪へ(フレイザー):収奪が無ければ資本蓄積は不可能
→従属労働と政治的従属が無ければ資本蓄積は不可能
・収奪:人間の能力と自然資源を没収し、資本増殖の回路に徴用し、蓄積する
(⇔搾取:資本が賃金を支払い「労働力」を購入し、剰余価値を蓄積)
「収奪が利益を上げるためには、次のような二つの方法によって生産コストを下げる必要がある。一つはエネルギーや原材料など安価な投入物を調達すること、もう一つは食料や衣服など低価格の生活必需品を供給して、より低い賃金で生活できるようにすることだ。自由でないもしくは従属する対象から資源と能力を没収すれば、資本家は(二重の意味で)自由な労働者から、より効果的に搾取できる」
・搾取される自由な対象と従属し収奪される対象との境界線
→「カラーライン」(W・E・B・デュポイス)とまず間違いなく合致する
→「人種差別される「他者」を収奪することは、”労働者“を搾取するために必要な背景条件なのだ」
・収奪は政治的観点が不可欠である:収奪の対象を決定するのは政治的秩序であるため
→国家そして国家を承認する国際システムが搾取可能な対象と収奪可能な対象を選別
→どちらの身分も政治的に作られたものであり、人種はその選別のための基準
「自由で搾取される対象と、従属し収奪される対象とを分ける要素は「人種」という目印である」
②人種差別に基づく蓄積体制の歴史的変化(p79-91)
・資本主義の歴史=人種差別に基づく蓄積の体制の流れ
→搾取と収奪との関係の歴史的変化
・重商資本主義(商業資本主義):16世紀~18世紀 搾取と収奪が分離し始める時代
→人種主体化のさきがけを生み出し、後に大きな影響を及ぼした。
例えば、ヨーロッパ人/先住民、自由な個人/奴隷、白人/黒人
→資産を持たないものはほぼ全員が統治の対象で、社会的身分は従属的関係であったため、人種区分はさほど明確ではなかった。
・リベラルな植民地資本主義:19世紀 搾取と収奪が明確に切り離される時代
→工場を舞台とした大規模製造業の隆盛
→マルクスの思い描いていたプロレタリア階級を作り出し、階級闘争を刺激した
→搾取される労働者に資本主義システムに適合した市民権をもたらす
→自由で白人の市民=労働者⇔従属するほかない収奪可能な被支配民という二つの人種の誕生、人種差別の固定化
→「搾取と収奪は分離されているように見えて、全体的には重なり合っていた。安価な食糧、衣服、鉱石、エネルギーを供給できたのは周辺住民を収奪したからであり、その収奪なしには、本国の工場労働者を搾取したところであれほど高い利益は上げられなかっただろう」
・国家管理型資本主義:戦間期から第二次世界大戦以降 搾取と収奪の分離を弱めた
→「収奪は最早搾取を排除せず、資本主義の中核の一部の労働市場で、搾取と直接結びついた」
→二重の賃金体系を持つ賃金労働。例:黒人は白人よりも給料が低い。
→福祉国家の誕生による身分の差の強化
→市民=労働者には社会保障制度の整備によって「搾取される」だけの労働者を政治的に組み込んだ。
→「ところが、そのことはそこから漏れたものとの差をより際立たせ、彼らを憤慨させ、人種差別される「他者」にさらなる烙印を押す結果となった」
→脱植民地闘争による植民地の独立
→被植民者の身分の上昇は一部にとどまり圧倒的多数は従属する立場のまま
→旧植民地国家の成長戦略は自国の住民の収奪を伴った
・金融資本主義:現在の主本主義体制 搾取と収奪が新しく独特の形で結びついた段階
→経済のグローバル化・サービス化、「底辺への競争」、税収の低下・緊縮財政に伴い、以前は市民=労働者として自由な個人という身分によって保護されてきた者も収奪の対象になる
→「債務」が収奪の原動力
→個人のレベル(例えば周縁国における土地の強奪、サブプライムローンといった略奪的貸付)に限らず国家のレベル(構造調整融資)でも債務による収奪が行われている
→無防備で収奪可能な多くの被支配民、保護され・搾取されるだけの市民=労働者に加えて収奪され、搾取される市民=労働者が登場した
③人種差別克服の可能性(p91-98)
・搾取と収奪の結びつきが弱まっているにもかかわらず、人種差別が続いているのはなぜなのか?
「金融資本主義は、それ以前の体制で人種的抑圧を支えた政治的、経済的構造を解体しつつある一方、今なお人種間の格差を抱え、敵愾心を助長する」
→「現在の社会システムはほとんど全員を収奪する。そして、その社会システムの廃止を目指す、人種の垣根を越えた運動が欠如しているとき、彼らの不満は、勢いを増す右派の権威主義的ポピュリズムとなって現れる」
・人種差別なき資本主義とは
→「有色人種が人口比に応じてグローバル金融と政治権力の高みに立つとともに、搾取かつ収奪の犠牲者が同じく人口比に応じて、政治の舞台で代表を務める体制
→これが実現したとしても、圧倒的多数の有色人種の生活条件がさらに悪化するならば、この種の「人種差別なき資本主義」はせいぜい共喰いの機会均等をもたらすくらいのものだろう
・人種差別の克服に必要なもの
→搾取と収奪を生み出す資本主義の転換を目指す人種を超えた同盟
→自発的に生まれることは無いが、息の長い政治的努力によって可能かもしれない
→搾取と収奪の境界があいまいな今、金融資本主義はおそらくその二つがともに廃止される素地を作り出している
「歴史が差し出す可能性を、真に歴史的な解放の力に変えられるかどうかは、私たちにかかっている」
4,おわりに~「搾取と収奪」という観点から労働運動について考える
・FUFあるいはフリーター労働運動の性格付けについて
→「搾取」される者の組合ではなく「収奪」される者の組合
・FUFが朝鮮学校を支援する会に賛同することの理論的根拠
→資本主義の人種的・帝国主義的矛盾である朝鮮学校差別
→境界闘争である朝鮮学校無償化行動にFUFが参加するのは、組合の性格上必然
→人種の垣根を越えた
2024-01-24 09:53
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